HDノンリニア(7)


総 括

 まだやっとこ動作することが確認できたばかりで総括するなどということは気も早すぎるのですが、今回の挑戦プロジェクトの一応の締めくくりと今後の展開をにらんでの整理という意味合いでまとめてみました。
 まず一番大きな成果は250万円というこれまでの常識からすれば破格に安いコストでハイビジョンノンリニアが動いてしまった、ということかと思われる。
 現時点(2004年3月初旬)で、アナウンスされているものも含めて、ほとんどは400万以上(機能的にはいろいろな差があるが)という状況である。
 ですから、ターンキー?ではないけれど、デックリンクHD&G5&XserveRaidという組み合わせでHDノンリニアが動くという現実は、少なからずこれからのメーカー各社の価格戦略に影響を与えることは必至と思われる。
 少なくとも現時点で100万円〜数百万以上ある価格差をどのような付加価値で納得させようとするのか、興味津々である。

 で、話は少し変わるが、SDI(シリアルデジタルインターフェース)という規格について考えてみた。
 お断りしておくが、映像のエキスパートにはあまりに初歩的なことかと思うので、SDIなどと言う言葉に馴染み薄い方へのよもやま話?程度に読んで欲しい。(^_^ゞ
 まずNTSCのSDIとは、720×486ピクセル(長方形)で構成される8又は10ビットの階調をもった規格であり、HD・SDIといったら、1920×1080ピクセル(正方形)で8又は10ビットの階調となる、と大ざっぱに表現できる。(HDSDIについてはもっと複雑みたいだが、、)
 だから数理的にはそれぞれのピクセルに階調数やサンプリング比(4:2:2とか4:1:1)、そしてフレーム数などと三原色を分を掛け合わせると表示に必要なビットレート(1.2Gbpsなど、、)が決まってくるということらしい。
 ま、ここではそういった計算式が重要ではなく、要は同軸一本で映像や音声のデジタル信号を受け渡すときの一つの規格だということが理解できればよろしいのである。
 SDIが高画質なのでなく、SDI伝送ならばフォーマットのすべてをやりとりできる、ということで、ソースが低画質では、それをSDIにしたところで高画質になるわけではなく、却ってデジタル変換するロスのほうが大きくなるかも知れないのである。

 私がSDIとのかかわり合いはSDのSDI,つまりD1ノンリニアに挑戦したときである。
 手もとにデジタルベータカムという実質的にハイエンドかつ共通フォーマットのSDIで扱えるということは非常に便利なのだが、ちょっと問題もあった。
 D1マシンのように非圧縮ならばなんの問題もないのだが、デジベは内部で1/2に圧縮している。
 だから、共通のやり取り規格のSDIで受け渡しするには、かならずその度に変換ロスを考えなければならない、ということである。
 幸い?デジベにおいては、デジベ同士のやり取りに終始するかぎり、いったんデジベのSDI?になったものは、それ以降の可逆性を保証するというものである。
 つまり、デジベで収録、もしくは最初にダビングした時点では1/2圧縮の瑕疵は無くせないが、それ以降はSDIとの可逆性を保証することで何度ダビングしても劣化は本質的にさせない、という技術である。
 つまり、一種のダビング端子?をSDIレベルまで拡張してしまったようなものである。
 ちなみにDVフォーマットでも、圧縮したままのSDTIなどという端子を用意することで、劣化を防いだりダビング速度を速めたりという技術が使われているようだ。

 しかし、そのいずれも同じメーカーの同じ機種でのやり取りで保証しているだけであって、DV圧縮も当然、HDの圧縮でも、インターフェースとしての共通化を図っているだけで、内部のコーデックと呼ばれるデジタル変換は微妙に違っているので、それらの異機種同士のやりとりでは、画質劣化ということもしっかりと念頭におかないといけないのである。(^_^ゞ

 で、本論のハイビジョンにもどると、まずはハイビジョンそのもののフォーマットがいっぱい存在する。
 私は技術的なことはほとんど判らないが、大ざっぱに分けても、東芝のハイビジョン非圧縮レコーダーに始まり、パナソニックのD5HD、ソニーのHDCAM、DVCPRОHD、そして民生用HDVなどいろいろあったりして、さらに解像度や走査線数、フレーム数などで細かく分類されているようだ。
 で、民生用のHDV規格以外は、共通インターフェースとしてHD・SDIなるものでなんとかやりとりできるのだが、もともと違ったやりかたでデジタル変換して記録するのだから、HD・SDIだけ共通化を図っても、そのやりとりのために独自規格とHD・SDI間の変換ロスを無視できなくなるのだ。
 これはハイビジョンが高画質ゆえに余計瑕疵が目立ってしまうという辛さもある。

 今回、私のところで実現したHDノンリニアは、現状ではHDカムとのやり取りだが、これは別にDVCプロだろうとなんだろうとHD・SDIでさえあればなんでも良いのである。
 ただ、このノンリニアマシン内部での記録フォーマットは、ブラックマジックコーデックと呼ばれるデックリンクの製造元で用意したドライバー、そしてマックのクイックタイムによる処理に負ぶさることになる。
 つまり、HDカムがソースであっても、一度取り込んだ時点ではすでにHDカムではなくなっているということである。
 吐き出す時点で何に出力するかでフォーマットが改めて決定するわけである。
 つまり、単純コピーであっても、いったんノンリニアやリニアのいずれでも、それらを経由すれば、確実に画質は変換劣化するということである。
 これは、現在市場に出ているハイビジョンマシンのほとんどについていえることで、私の使っているHDWー500というデッキでもデッキ間のストレートダビングでさえHD・SDI/HDCAM間の変換ロスで数回やれば画質破綻が目視できてしまうという現実がある。
 そのためにSDTIボードというオプションで、HDカム圧縮信号のままやりとりできる、いわばダビング端子みたいなものを用意することでストレートダビング時の変換ロスを防止する対策も練られているのだ。
 ソニーのNLEマシン、エクスプリにおいてはその圧縮したままのデータやりとりで編集できるようになっているらしく、それは開発メーカーの強み?といってしまえばそれまでであるが、市場からはコーデックの公開を要望されているという。(^_^ゞ
 DVCプロHDなどがどうなのかはしらないが、要は圧縮コーデックが公開されれば、そのままノンリニアに取り込むことでロスレスが実現しやすくなるし、便利になることは確実であるが、メーカー戦略的には別問題ではある。(^_^ゞ

 カノープスのHDノンリニアは、インタービーで伺ったお話では、やはりHD・SDI信号を受けたら、それをカノープスHDコーデックで変換して、それを保存するということらしい。
 当然、変換ロスは存在するのだが、圧縮したままでHDDに保存、またやりとりも圧縮信号のままですることにより、HDDアレイの消費節約、転送速度低減に大きく寄与させているとのこと。
 だから、私のところのようにXserveRaidみたいな大げさなものは必要なくなるということだ。
 コーデックも、SDにおいては定評のあるカノープスですから、画質期待も高い。
 しかし、いずれにしても一回こっきりで編集してしまわないとSDIとの変換の度に劣化することは否めないのである。
 ソニーのHDカムSRシリーズは、そういった変換ロスを少しでも防止する意味合いで登場したともいえるらしい。
 ただ圧縮というとその瑕疵ばかり気にしがちだが、圧縮とはコーデックだけの問題ではない
 たとえばVHSビデオ再生信号を非圧縮で取り込むメリットがあるかどうか?。
 つまり、取得する信号のレンジを決める時点ですでにある意味での圧縮があったりするのである。
 ハイビジョンにおいても、様々なフォーマットのなかで低解像度のものをソースとすれば非圧縮でも低解像度、逆に高解像度のソースにすれば、高圧縮でも高解像度を期待できるということである。
 勿論そのための瑕疵も存在するのだが、デジカメで、ピクセル数の少ないカメラで非圧縮取り込みよりも、数メガピクセルで圧縮Jpegのほうが奇麗なのと同じである。
 つまり要はバランスの問題なのだが、そのあたりが開発各社のセールストークとして使われたりするらしい。(^_^ゞ

 どうもお話が横道にそれるのだが、今回のHDノンリニア稼働の総括として、HDカムをソースとして実現したものの、これからの需要動向ではDVCプロHDやHDVをソースにすることも充分考えられるということである。
 また、ブラックマジックHDコーデックの性能もゆくゆく検証してゆきたい。
 更に、XserveRaidの使い方も工夫が必要だ。
 現在は7×2の14ヶすべてをRaid0でストライピングしているが、SDのノンリニアでの経験から、2−ストリーム流すような場合は、HDDは別のものを使ったほうが安定しやすい。
 だから、XserveRaidも、もし可能ならばストライピングを2セット作って、PinPなどの編集実験をしてみたい。
 またそれが無理ならば、XserveRaidをもう一セット導入して、ファイバーチャンネルボードの増設でG5に2セット抱かせてしまうという方法も考えられる。
 ただ、デックリンクHDのボード取り付け指針では、ボード下のPCIカードは空きにして、塞ぎ板を外して空冷効果を高めるようになっているので、その場合はファイバーカードの増設はできないことになる。
 また、1台のXserveRaidのストライピングセットの作り方も、左右チャンネル別に二セット作るのが良い(アップルサーバー担当推奨)のか、左右チャンネルdual駆動でつくるのが良いのか実験しないと判らない。
 また、今回のボードはSDのSDIノンリニアにも対応しているので、バックアップの意味も込めてHDノンリニア2セット構築してしまい、普段はSDノンリニアとして快適に動かせるということもいいような、、。(^_^ゞ
 いずれにしてもあれほど困難と言われていたHD非圧縮信号が気軽?に扱えるようになった今、私たち地域の零細ビデオ業者、またハイアマチュアが差別化や自己満足の重要なアイテムとして使い回し、コンテンツ製作の幅が大きく広がったことは意義があると言える。
 そして、HDVなどの民生ハイビジョンフォーマットへのダウンコンバート、DーVHS、ブルレイディスクなどのへMpeg2TS変換などの道が拓けたときビデオ業界も一気にハイビジョン旋風が起きるかも知れない。(世の中の景気動向は無視できないが、、)(^_^)v